テトラキクルス属03

　バシラリア亜門(Bacillariophytiae) バシラリア綱(Bacillariophyceae) タベラリア目(Tabellariales) タベラリア科
　(Tabellariaceae) テトラキクルス属(Tetracyclus)のうち、以下の特徴を持つ分類群を掲載します。
　・殻面は楕円形、殻中心は比較的弱く膨出し、殻端は丸まる。
　・肋はおおむね直線状で殻端付近では湾曲し、殻を横断せずに途中で消滅する場合もある。
　・条線は肋に平行に配列し、その密度は細かい。
　・帯片(copula)の隔壁は板状で片側殻端殻から中心付近に存在し、殻端では幅広く、殻中心付近では
　　非常に狭い。
　・唇状突起は殻中心より片側の殻端に寄った殻縁に接するように存在する。
　この分類群は当HPのテトラキクルス属01と比べ殻中心の膨出が弱く、殻端は丸まる点で異なります。
　また、この分類群が湖成層から産出するのに対してテトラキクルス属01は海成層から産出する点も
　異なります。
　Kramme&rLange-Bertalot(2004)では両者ともにやや小型ではありますが、Tetracyclus glansと
　特徴が一致します。
　このページに掲載されている標本は北海道東部の堆積層から採取した個体です。

　テトラキクルス属03-01 (Tetracyclus glans (Ehrenberg) Mills)

　特徴；この標本では殻面(1397c)と帯片(1397a)が観察できる。
　　殻面は楕円形で殻中心が膨出し、殻端は引っ張り出されずに幅広く丸まる。
　　横断肋はやや幅が広く、殻中心を境に反対側に湾曲する。
　　全ての肋が殻面を横断する。
　　条線は胞紋列からなり、近くの横断肋と同様の湾曲し、殻端付近の条線のみ
　　横断肋に対して傾いて走り、束状かつ偏心的である(1397c上側殻端)。
　　唇状突起は明瞭で、片側殻端の殻縁付近に存在する(1397a)。
　　帯片は片側殻端から殻中心付近まで伸びる板状の擬隔壁を持ち、殻端では
　　比較的幅広く、殻中心付近では非常に狭い。
　殻長；24.3μm
　殻幅；17.3μm
　肋密度；3-3.5/10μm
　条線密度；19.5-21/10μm
　肋間の条線数；5-6
　・採取地；北海道東部2(湖成層)
　・封入剤；カナダバルサム
　・撮影倍率；×1000
　・スケールバーは10μmです。

　テトラキクルス属03-02 (Tetracyclus glans (Ehrenberg) Mills)

　特徴；この標本では帯片が観察できる。
　　帯片はやや細長い楕円形で殻中心は側方に弱く膨出し、殻端は引っ張り出
　　されずに幅広く丸まる。
　　片側端部から帯片の中心付近にかけて板状の隔壁が伸び、殻端では幅広
　　く、殻中心では非常に狭い。
　　帯片は隔壁以外の胞紋や条線、突起等の構造は認められない。
　殻長；26.4μm
　殻幅；14.1μm
　・採取地；北海道東部2(湖成層)
　・封入剤；カナダバルサム
　・撮影倍率；×1000
　・スケールバーは10μmです。

　テトラキクルス属03-03 (Tetracyclus glans (Ehrenberg) Mills)

　特徴；殻面は長い楕円形で殻中心で両殻縁は側方に膨出する。
　　殻端は引っ張り出されずに幅広く丸まる。
　　横断肋は幅が広く、殻端付近で湾曲し、途中で途切れる場合もある。
　　条線はやや不明瞭で胞紋列からなり、おおむね肋と平行に走るが、殻端付
　　近では斜めに走ったり放散状に配列したりする。
　　軸域は不明瞭ではあるが殻中心付近では認められる(1398b)。
　　殻縁に接する位置にまわりを畝に囲まれた細長い孔が認められる(1398b)。
　　これは唇状突起と考えられる。
　殻長；26.7μm
　殻幅；15.7μm
　肋密度；3/10μm
　条線密度；19-21.5/10μm
　胞紋密度；14-19.5/10μm
　肋間の条線数；5-7
　・採取地；北海道東部2(湖成層)
　・封入剤；カナダバルサム
　・撮影倍率；×1000
　・スケールバーは10μmです。

　テトラキクルス属03-04 (Tetracyclus glans (Ehrenberg) Mills)

　特徴；殻面は長い楕円形で殻中心で両殻縁は側方に膨出する。
　　殻端は引っ張り出されずに弱くかつ鈍く尖るように見える。
　　横断肋は幅が広く、殻端付近で湾曲し、やや斜めに走る場合もある。
　　全ての肋は殻面を横断する。
　　殻面には1個の唇状突起が認められる。
　殻長；31.8μm
　殻幅；14.7μm
　肋密度；2.5-3/10μm
　・採取地；北海道東部2(湖成層)
　・封入剤；カナダバルサム
　・撮影倍率；×1000
　・スケールバーは10μmです。

参考文献；
　・Krammer, K. and Lange-Bertalot, H., 2004. Susswasserflora von Mitteleuropa, Bacillariophyceae3.
　　Spektrum AKADEMISCHER VERLAG.
　・南雲　保，鈴木秀和，佐藤晋也, 2018., 珪藻観察図鑑., 誠文堂新光社
　・Round, F. E., Crawford, R. M., and Mann, D. G., 1990. The diatoms, CAMBRIDGE.

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　製作者：NaCl & Au