アクティノキクルス属01

　アクチノキクルス属 01-03-01（Actinocyclus ingens Rattray）

　特徴；殻は円形で、若干同心円状に波打つ。
　　殻面に対して殻蓋は斜めに広がる。
　　胞紋は多角形で隣り合う胞紋同士は密着して胞紋列を作り、放散状に配列
　　する。
　　殻周縁近くで隣り合う胞紋列の間には若干隙間が空く。
　　胞紋密度は殻面と殻蓋の境界で急激に変化し、殻蓋では殻面よりも細かく
　　なる。
　　殻蓋の胞紋は環状に配列し、環状列が少なくとも5列認められる。
　　殻面と殻蓋の境界には小孔の集合域が1つ存在する（560e矢印A）。
　　この小孔の集合体は焦点深度が変わると、1つの大きな半円の孔とその
　　周囲を環状に取り囲む1列の小孔として観察される（560d矢印B）。
　　これは擬結節（pseudonodulus）である。
　　この標本は胞紋が多角形で隣り合う胞紋同士が密着すること、殻蓋の胞紋
　　密度がこのページの他の標本よりも明らかに細かいことから、このページの
　　他の標本とは異なる分類群である可能性がある。
　殻径；42.4μm
　胞紋密度；殻面：5.5-6.5/10μm　殻蓋：13-13.5/10μm
　殻面の胞紋の大きさ；1.02-1.71μm
　・採取地；茨城県北部6(中期中新世の海成層)
　・封入；カナダバルサム
　・撮影倍率；×1000
　・スケールバーは10μm

　アクチノキクルス属 01-03-02 （Actinocyclus ingens Rattray）

　特徴；殻は円形で、同心円状に波打つ。
　　殻面に対して殻蓋は斜めに広がる。
　　殻面の胞紋は比較的細かく、放散状に配列し、途中で二股に分かれることが
　　よくある。
　　殻周縁近くで胞紋密度は徐々に細かくなる。
　　殻蓋の胞紋は数列の環状列を形成し、殻面よりもその密度は細かい。
　　殻面と殻蓋の境界には小孔の集合域が1つ存在し(1489a殻周縁右上付近)、
　　殻表面に対してくぼむ(1489e)。
　　この小孔の集合体は擬結節（pseudonodulus）である。
　　殻中心の胞紋は歪な環状構造を作るように見える。
　殻径；60.0μm
　胞紋密度；殻面：6-7.5/10μm　殻蓋：8.5-10/10μm
　殻周縁部突起間距離；9.3-9.9μm
　・採取地；茨城県北部3(中期中新世の海成層)
　・封入；カナダバルサム
　・撮影倍率；×1000
　・スケールバーは10μm

参考文献；
　・Akiba, F., and Yanagisawa, Y.,1986.Taxonomy,morphorlogy and phylogeny of the Neogene
　　diatom zonal marker species in the middle-to-high latitudes of the North Pacific. Initial
　　Reports of the Deep Sea Drilling Project, 87: 438-554.
　・南雲　保，鈴木秀和，佐藤晋也, 2018., 珪藻観察図鑑., 誠文堂新光社.
　・Round, F. E., Crawford, R. M., and Mann, D. G., 1990. The diatoms, CAMBRIDGE.
　・Tomas, C. R.,1997. Identifying marine phytoplankton, Academic Press.

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　製作者：NaCl & Au

　　コシノディスクス亜門(Coscinodiscophytina)　コシノディスクス綱(Coscinodiscophceae)　コシノディスクス目
　(Coscinodiscales)　ヘミディスクス科(Hemidiscaceae)　アクチノキクルス属（Actinocyclus) A. ingensのうち、
　以下の特徴を持つ分類群を紹介します。
　・擬擬結節は焦点深度によって小孔の集合体として観察され、周りの殻面よりもくぼむ。
　・殻面の胞紋は胞紋列を作り放散状に配列する。
　・胞紋列の束は作らず、途中で二股に分岐することがある。
　この分類群は下記の論文Akiba and Yanagisawa.(1986)に記載されているActinocyclus ingensの特徴と
　一致します。